*清瀬太陽目線*



俺には好きな女の子がいる。
それは隣のクラスの藤田綾乃っていうやつ。


話したことは……一度もない。


でも何度かすれ違ったことあるし、ぶつかったこともある。


最初は可愛い子だなぁ……って見てただけだったけど、たまに見る悲しそうな顔を見て無性に歯がゆくなったのがはじまり。


俺がもっと笑わせてやりてぇ。

俺だったらもっと毎日楽しませてやれるのに。


そう、思った。


でも彼女には修二先輩という彼氏がいる。

この学校にいる人なら知らない人はいないっていうほどのアイドルだ。


……勝てる気はまったくと言って、ない。



「…………」



しかし、これどうすっかなぁ……。


中学の頃からの同級生のユカにそそのかされて書いちまった手紙。
いわゆるラブレターってやつ。


気持ちをそのままに書き綴ったが、正直かなり恥ずかしいわ……。


さっきから藤田の靴箱の前をうろうろしてる。


入れるか、入れないか。ずっと迷っている。


告白してしまいたい。
でも、絶対向こうは俺のことなんて意識したことすらないだろうし。



「…………」



ああもう!いいや!
入れてしまえ!


そう思った瞬間、階段のほうから足音がするのが聞こえた。


やっべぇ!


さっと藤田の下駄箱に手紙を入れるとその場を走り去った。