入学式が終われば通常授業が始まる。そんなある日、
「なんで司がいるの?」
 昼休みが始まってすぐ嵐に訊かれた。
「翠葉ちゃんのとこに行かないの?」
 続けて優太にも訊かれ、「しばらくは」とだけ答えた。
「ふーん……司も少しは翠葉ちゃんのことを考えてるってことかな」
 三年で同じクラスになった朝陽に意味深な笑みを向けられたが、とくに返事はしなかった。
 新学期が始まって三日目。翠はまだ、クラスの人間全員とは話せていないだろう。
 簾条と海斗、佐野と漣、ほかにも顔見知りがいる時点で昼休みはそのあたりの人間と食べているであろうことは想像に易い。ただ、その人間たちばかりとつるんでいればほかのクラスメイトと話す機会は必然と減るはず。
 クラスで孤立することはなくとも、クラスメイト全員と言葉を交わすまでにはそれなりの時間がかかる環境下にいるなら、その期間は別々に昼休みを過ごせばいいと思っていた。