「秋斗さん、いらっしゃい。唯兄もお疲れ様」
 ふたりに声をかけると、
「仕事から帰ってきてこの言葉が聞けるのって嬉しいよね」
 秋斗さんが唯兄に同意を求める。と、
「だからって、うちに入り浸りすぎやしませんかね?」
 唯兄はちょっと意地悪な言葉を返した。
「だって、こうでもしないと翠葉ちゃんと会えないしね」
 秋斗さんは会社を立ち上げると同時に、図書棟にあった仕事場を引き払った。本来ならこんなふうに毎日会える環境にはないのだ。
「……会う機会……会える環境……」
 それはやっぱり自分で作らなくちゃいけないものなのか……。
「翠葉ちゃん、どうかした?」
「あ……えと……ツカサと全然会えなくて……」
 現況を話すと、秋斗さんにクスクスと笑われた。