「こっちに帰ってくるならケーキ焼いたのにっ」
 そこまで言って思い直す。
「ツカサ、やっぱりだめ……」
『何が?』
「明日はツカサの誕生日だもの。真白さん、絶対にごちそうを用意して待ってると思う。だから、明日は藤山に帰らなくちゃだめ」
『……家で夕飯食べてからマンションに行くこともできるんだけど』
「……あ、そっか」
『明日、八時にはゲストルームに行くから』
「うん、待ってるね」
『じゃ、おやすみ』
「おやすみなさい……」
 なんてことのない会話におやすみの挨拶。
 特別な要素が何もなくても私にとっては特別で……。
 幸せな気持ちのままベッドに潜り込んだ。
 耳に、ツカサの声が残るうちに眠れたなら、夢でツカサに会える気がして――。