ねぇ、圭ちゃん。


__圭ちゃんにとって私って何だった?







私の家は何だかんだ有名な家で
私は親からいろんなことを強制されていた。



ピアノにバレエ、習字、茶道....


そして、家庭教師もつけた。



__その先生が...圭ちゃんだった。




圭ちゃんはすごく優しかった。


何でも相談を聞いてくれて、いつも笑顔で、


とっても温かくて......誰よりも大好きだった。





そんな中、家の中はどんどんと荒れていった。



...愛人を作って中々家に帰ってこなくなった父


...それを知って狂ったように遊び呆け
終いには家に男を連れ込むようになった母



「お前がもっとちゃんとして、母さんを...」

と父は溜め息を吐き、そう言う。


「お前なんか産まなきゃよかった。」

と母はわめき散らして叫ぶ。




私はどうすればいいのか解らなくて、
ただ泣き続ける日々だった。






そんなある日。



学校から帰ると知らない男がソファに座っていた。


その男は私に気付き、付いてきた。



「....へぇ...あいつの娘か...」



そう言って私の顔を身体をじっくり見てくる。

きっと母の男で、あいつとは母の事なのだろう。


私は気持ちが悪くて、早く自分の部屋に行こうと
すると男が私の腕を掴み、床へと押し倒してきた。



「......ははっ、大丈夫。お前の母さん
まだ帰ってこねぇから、安心しろ…」


そう言って笑う男に恐怖しかなかった。



「やっ!やめて!」


必死の抵抗も無意味におわってしまう。



あぁ、きっと私このまま...


もうダメだと目を瞑ったその時。


私にのし掛かっていた重みが無くなった。




「......え...」




目を開けるとそこには倒れた男と


拳を震わせる.......圭ちゃんの姿だった。



「.........圭ちゃん?」



私は安心したせいか、恐怖のせいか、
そこで意識は途切れた。






__目を覚ますと、そこは私の部屋だった。



「...目、覚めた?......大丈夫?」



そう言って私の顔を心配そうに
のぞきこむ圭ちゃんがいた。


私は静かに頷いた。



「俺...るいがあの男に襲われそうになってんの見て、ほんと、頭の中真っ白になって...いつの間にか男に殴りかかってた....初めて本気で人殴ったよ…」


そう言って困ったように微笑む圭ちゃん。




「......圭ちゃん...ありがとぅ....」




私がそう言うと圭ちゃんは暫く黙ってしまった。


すると、圭ちゃんは真剣な表情で言った。



「....俺....るいのこと好き...だ...」



「....えっ...」



私は思ってもいなかった事に驚いて言葉がでない。




「..なぁ...るい。...俺のところに来こない?」



そう圭ちゃんが言った。




私の瞳から一粒の涙が零れ落ちた。


そして、考えることもなく何度も頷いた。



「.......私も圭ちゃんが....好き。」




そんな言った私を圭ちゃんは
優しく笑って頭を撫でてくれた。