歩道橋の上。
下には行き交う車たち。
_ここから飛び降りれば死ねるだろうか?
そんな事を考えながら私は目を閉じた。
すると突然横から声が聞こえた。
「なぁ。今日は満月だな?」
声のする方へ向くと1人の男が空を見て立っていた。
私は意味がわからなくて、歩きだそうとすると
「知ってる?...満月の日って、
人が一番死んじゃうんだって...。」
私は眉を寄せた。
「....意味、わかんないんだけど…?」
すると、男はフッと笑って近づいてきた。
「...あんたもその1人になるのかと思って...」
「ほんと...意味わかんないから…」
私はそう言ってまた一歩足を進めようとしたが
私の動きは止められたのだ。
男は私の腕を掴み、歩きだした。
「ちょっと!離してよ!」
私は必死に抵抗しても全く意味はなく、
男につれていかれるがままだった。
そこから車に乗せられて
マンションの一室に連れてこられた。
そして、男は冷蔵庫からビールを2缶取ると
私にそのひとつを差し出した。
私はそれを受けとることなく、目の前の男を見た。
すると男は口を開いた。
「...飲まないの?」
私はその男の声に答えずにいると、また腕を引かれて、そのままベッドの上に押し倒された。
_ぁあ、やっぱりこれが目的なんだな…
私はそんなことを無駄に冷静に頭のなかで思った。
そして、男は私の唇に自分のを重ねた。
すると男は喉でクッと笑った。
「おもしれぇ女。 」
そう言った男の顔に思わず見いってしまった。
暗くて見えていなかった男は
赤に近い茶髪に、驚くほどに整った顔。
男はそのまま私を抱いた。
まるで私を喰らうかのように荒々しく抱いた。
そして目を覚ますとベッドに腰掛け
私の頭を撫でながら、煙草を吸っている男の姿。
「なぁ。」
私が起きたのに気付いた男は言った。
「名前教えろよ。」
「.......ルイ。」
「....ふぅん。」
「何よ.... 」
私がそういうと男はまたフッと笑った。
「別に....。俺はヒロ。」
「あっそ。」
私はそれだけ言って、また目を閉じた。
___そう。これが私とヒロのはじまり。