「.............」
圭ちゃんのお墓の前で手を合わせる。
「........行くか。」
そう言って立ち上がったヒロ。
「......うん。」
私は気になったことを思い出した。
「......あっ......ねぇ、ヒロがいつも圭ちゃんのここのお花、供えてくれてたの?」
「......ん....まぁな.....」
「...そぅだったんだ。 ....でもここで会ったことってないよね?」
「.....そうだな....ま、俺、もう一ヶ所行ってるからな..」
「.....紗希....さんの...?」
私がそう言うと、ヒロは空を見上げて優しく笑った。
「............あぁ...」
__その横顔を見ていたら、
ヒロが前に言っていた紗希さんのろくでもない彼氏
とは本当はヒロ自身のことだったんじゃないかな?
......なんて思ったけどそれを口には出さなかった。
「........ねぇヒロ。...圭ちゃんになんて言ったの?」
そう言うと、ヒロはこっちを向いてニコッと笑った。
「....歩道橋で初めてしゃべった日。...圭太が大切にしてたルイのこと、喰っちゃって悪かったな って。」
「.....なにそれ.....」
「....ってか、お前が聞いたんだろ....」
「.....ねぇ、あの時、圭ちゃんと私のこと知ってて、
........なんで私を抱いたの?」
「....なんでだろうな。...欲求不満だったからかな…?」
そう言って笑ったヒロ。
「.......あっそ。」
「......冗談だよ。...なんていうか、お前、今にも消えて無くなっちまいそうで.......だから...俺、いつの間にか、お前に声かけてたんだ...。...ってか..よくわかんねぇよ。」
そう言って頭を掻くヒロ。
「........ヒロは.....私のこと...好きなの...?」
私がそう言うと、ヒロは視線を下に向けて微笑んだ。
「.....さぁな...」
「.....ふぅん...」
すると、ヒロは片方の口角を上げて、私をみた。
「 つーか..お前こそ、俺のこと好きなんじゃねぇの?」
「....はぁ...何言ってんの...」
「.....俺の病室でわぁんわぁん泣いてたくせに…」
「.....それは....」
「.....しかも、....俺のこともいつの間にか、ヒロって呼んでるし....」
「....じゃぁ.....もう呼ばないっ..」
私がそう言うと、ヒロはハハッと笑って
私の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「....わぁったから....ヒロって呼べよ...な?....ルイ。」
そう、子供に言い聞かせるようにヒロは私に言った。
「.....ヒロ...」
「.....おぉ。」
「.....ありがとう...」
私が小さく言った一言は吹いた風で消えてしまった。
すると、ヒロは微笑み、私の手を握った。
繋いだその手は温かくて、優しかった。
__なぁ、圭太。
圭太が大切に護ってきたルイは
俺がもらうな…? いいだろ?...もう三年も経ったんだ。
これからは俺が護っていくから。
心配すんな。.....それと、ヤキモチ妬くなよ?
圭太は俺にとってずっと変わらない
たった一人の大切な親友だからな。
圭太のこと一生、忘れねぇから。
__ねぇ、圭ちゃん。
圭ちゃん、今まで本当にありがとう。
私、圭ちゃんのこと疑って、ごめんね。
圭ちゃんと過ごした時間は私のすべてでした。
過去(イママデ)も現在(イマ)も未来(コレカラ)も
ずっと圭ちゃんが大好きだよ。
私は一生、圭ちゃんのこと忘れないからね。
「.....圭ちゃんは...ずっと
私達のなかで生き続ける。」
「........あぁ。」
__そう言って私とヒロは、
どこまでも続く、広い空を見上げた
*end*