ちらちらと、光の粒に擬態した、あくまで埃でしかないそれが宙に舞っている。

だから日当たりのいいリビングは好きじゃないと言ったのに。


『――…おまえは変わらないな』


逆光で陰る大小様々な姿は、どこか気まずそうに私と向き合っていた。

ひとり、ふたり、三人。その肩越しに、6:56と表示されたテレビの左上が目に入った。


『――…昨夜未明……の交差点で……左から来た乗用車にはねられ……は病院に運ばれましたが……です。警察によりますと――』


ああ、最悪。見ないならテレビは消してほしいと、あれだけ言ったのに。


きりきりと痛み始めたのは胃か、頭か。鋭い痛みに気を取られていれば、目の前の人影はそばに置いていた重々しいキャリーケースを引き寄せた。


『――…』


ダメだ。何を言っているのか聞き取れないし、さっきから顔にへばりついている何かが気になってしょうがない。


『――…じゃあな、灯』



ちょっと待って。
私の体、どうしてこんなに冷たいの?